デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

恥ずかしくなって、少しうつむいて歩いた。

しばらく無言で、二人の足音だけが渡り廊下に響いた。

気持ちのいい風が、その下の池にさざ波をたてている。

深宮まで広がる池は澄みきって、空の雲を映していた。

「…客人であるあなたが私に敬語なんですから、私の方から敬語はやめられません」

小さな声が、風に乗るように桜に聞こえた。

「……えっ?」

見ると、カナンが頬をわずかに赤くして、ネコのような目を軽く睨むようにこちらに向けていた。

(い…今までずっと、その事考えてたの?)

驚きながら、桜は言った。

「私から敬語をやめたら、いいんですか?」
「王からは、客人をもてなせというご命令を受けていますから」

あ、そういうことか。

「ああ…じゃあ、いいですよ。嫌なのを強制してまでは、別にそんな」

苦笑いすると、カナンは目をそらし、頬の赤みが強くなった。

「……嫌だとは、言っておりません」

「え……」

何だかつられて赤くなる。

しばらくてくてくと歩いていたが、桜がおずおずと口を開いた。

「じゃあ……えと……カナン。嫌じゃないなら、こうやって話してくれる?」

「…………分かっ、た……」

何だか、二人ともますます真っ赤になった。