デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

食事をとり、そわそわと落ち着かなく待っていると、静かに戸が叩かれた。

「お食事は、お済みですか」

カナンの声だ。

こくん、とのどを鳴らして、桜は返事をした。

「…はい」

「失礼します」

一呼吸の間をおいて、戸が開かれた。

一瞬目があったが、すぐにカナンはその目線を伏せた。

「我が君が、深宮でお待ちです。ご案内します」

いつもと変わらない無表情で、先に立って歩き出そうとする。

「あの、カナンさん」

思い切って、声をかけた。
カナンの足がピタリと止まり、一瞬の間があってこちらを向いた。

「…はい」

「あの……」

口ごもる桜。色々言葉は考えても、どれも薄っぺらい感じがして言い出せない。

ふう、と小さく息を吐き出した。

「…昨日は、ひどい事言って、ごめんなさい」

そう言って、深く頭を下げる。

結局これしか思いつかなかった。

カナンはカナンで、実際こうして謝られたら、どうしていいか分からない。

「お止め、ください。王の客人が、近侍に、頭を下げるなど」

途切れ途切れにそう言うのが精一杯だ。