デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

カナンは、自分の両親の顔を知らなかった。

大して珍しくはない。言葉もままならない幼児の時に、人買いに売られたのだ。

小柄で細く、すぐ熱を出す彼は、労働力としての商品価値はほとんどなく、なかなか買い手がつかなかった。
檻の中で、満足な食事も与えられなかったので当然の事なのだが、『穀潰し』と言われ、日常的に暴力を受けた。

人買いの元でこき使われていたカナンは、それでも何とか生き延びていた。
いつか、外の広い世界を見たいと思いながら。

10歳になった時、いきなり人買いに呼ばれた。
隣にはにこにこと笑いを浮かべる中年の男。

やっとお前の買い手が見つかったと言われた。

連れて行かれた先は、立派な屋敷だった。
奇妙な事に、そこにはたくさんの若い女たちがいて、それぞれ自分の部屋を持っていた。

娼館だった。

カナンの『仕事』は、早速始まった。

労働はもちろんだったが、夜になり客が集まる時間になると、カナンも化粧を施され、女と客の側で世話をしたり、ずっと見ていることを強要されたりした。
嫌悪に顔を背けると、容赦なく殴られた。

“ふふ…ダメよ、カナン…”
“いらっしゃい、あなたも混ぜてあげる……”