デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「では、昼の食事が終わった後に、またそなたを呼ぼう。…よいか」

「はい」

頷く桜に、ふと王は真顔になって言った。

「…もうひとつ、許してほしいのだが」

「?」

「カナンのことだ」

「あ……」

昨日のことも、この人はしっかり知ってるらしい。

「私の近侍が、ひどい無礼をした。……すまない。もう二度と、かような口はきかせぬゆえ、今度だけは許してやってはくれないか」

長いまつ毛を伏せて、王は言った。

「…いえ、私もひどい事、言いましたし…物も投げましたから。……ご存知だとは思いますけど」

何となく気まずくて、指をもてあそぶ。

ふっ、と短く息を吐き、ゆっくりと首を振った。

「いや、いかなる理由があろうと、先に挑発したのはあやつだ。未だ、胸にくすぶるものがあるのだろうが…そんなものは仕事の言い訳にはならぬ」

胸にくすぶるもの?

普段の、淡々として無表情な彼からはあまり想像が出来ない。
少し首をひねる桜に、王は話しだした。