何とか足をつくことが出来て、桜はほっと溜息をついた。
「さて…なんて、声かけよう…」
街のほうにおそるおそる足を運びながら、考える。
建物はすべてこちらに裏口を向けているようで、人に会うには表通りに出るしかない。
建物と建物の間は細い路地になっていて、ちいさな猫のような生き物や、子供たちが遊んでいる。
そっと一軒の裏口のかげに身を隠して、その路地から目だけを出して覗くと表通りが見えた。
遠目から見た印象は『平安京』だったが、石造りの壁に木のドア、木の屋根の街で、どちらかというとスペインや南フランスの風景のようだった。
けれど、このにぎわいはまるで東南アジアの市場のそれのようで、桜はなんとも奇妙な感じがした。
「…いつまでも観察してても、しかたないよね…」
こくんと喉をならして、桜は路地を通り、表へ出た。
