デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

一方、桜は湯殿にいた。

ネットがあるわけでもなく、読める本が身近にあるわけでもなく、外出も出来ない。

女官達はそそくさと退出してしまうし、あとここを訪れる人間と言ったらあのカナンくらいだ。

寝るか、考え事をするか、お風呂に入るしかない。

(もう湯治に来たおばあちゃんみたいになってる…)

湯船に浸かりながら、そんなことを考えている。

(……今日も、あの部屋に連れてかれるのかな…)

暗い気分になった。

王には平手打ちをした上に怒鳴ってしまったし、カナンには二回茶器を投げつけて悪口を言った。

「はあ……」

冷静になってみると、何とも後味が悪い。

胸にモヤモヤした罪悪感のような、後悔のようなものがよどんでいる。

(いや、だって!)

ぱしゃ、と水面を叩く。

(だって、いきなり大して知らない人に、フ…フ…ファーストキス………普通、怒るよね!?怒るよ!!)

そっと唇に触れる。湯のせいだけではなく、顔が真っ赤になった。

(私だって、そりゃ、理想のシチュエーションとか、あったのに……)

叶わないだろうと思ってはいても、夢くらいは見る。