土手を下りきった桜は、早速困惑した。

街の河側に面した方は、延々と高さ2mほどの柵が立てられていて、おまけに出入り口がないようだった。

木を格子状に紐で結われたそれは頑丈で、桜の力などでは壊れそうにない。

柵の向こうはちょっとした広場になっていて、すぐに家や店が並んでいた。広場の方には誰もおらず、声をかけようにも、どうしようもない。

「…よじ登るしかないか……」

ああ、アスレチックなんて小学校のとき以来。大っきらいなのに…

ふうっとため息をついて、意を決して最初の格子に足をかけて登りはじめる。

ギシ、ギシと一足ごとに柵が嫌な音をたてて、桜は冷や汗をかいた。

公園や学校でよく見かける鋼鉄製の遊具でも怖いのに、手作り感たっぷりの木の柵だ。

なるべく下を見ないように、震える足を踏みはずさないように、やっとのことで向こう側へ。