デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

夕日が、その金髪をまばゆく輝かせる。

眉間のシワを深くして、カナンは公宮への廊下を一人歩いていた。

胸の中には、桜に対する憎しみがどす黒く渦巻いていた。

自分の敬愛してやまない主君であり、命の恩人を平手打ちしたばかりか、暴言を吐いて走り去った。

あの醜い、『魔』のような女が。

だが、王はあれをかばい、自分を叱責した。

全く納得できずに、ぐっ、とまた下唇を噛んだ。

大股で客用の宮の前を通り過ぎようとした時、女官が二人、困惑したように入り口の前でウロウロしている。

「どうした、何か」

カナンが尋ねると、あ、と声を上げて一礼した。

「いえ、あの…もう夕刻なので、お客様の部屋に灯りを入れに参ったのですが、その……泣いていらっしゃるようなので」

入るに入れないということだろう。

泣いている?

カナンは眉をひそめた。一体、なぜ。

「私が灯りを入れよう。火を寄越せ」

女官の持っている火種の入った鉄製のランプを指差した。

「え…、でも」

戸惑う女官をじろりと睨む。

「いいから早くしろ。お前たちは下がれ」

二人を追い払い、桜の部屋へ向かった。