さぞかし怒りの表情を浮かべているかと思いきや、相変わらずの無表情。
思わず桜は拍子抜けして目を丸くした。

「お別れは、お済みになりましたか」

「…はい…」

「では、まだ王のご政務が終わられませんので、客室へご案内いたします」

くるり、と桜に背を向け歩き始めた。

(……怒ってないのかな)

桜は心の中で首をかしげた。

制止を聞かず、焦っていたとは言え結構な暴言を吐いた気がする。

けれど、『怒ってないんですか』『嫌味言わないんですか』なんて聞けるわけがない。

(余計なことを言わないでおこう)

昨日だって、お礼を言ったらあの言い方だ。

こちらから話しかけるのは、少なくともこの金髪の少年に関しては避けたほうがよさそうだ。

そう結論づけて、桜は城内の天井画や内装、裏口からの広い庭園を眺めていた。