デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「ありがとうございます!」

すかさずまた走り出す。

「桜様!」

近づいてくる、苛立ちが混じりだした声の主に、走りながら言った。

「あなたの嫌味なら後でたっぷり聞きますから、今は急がせてください!」

まだカナンが何か言っていたが、桜の耳にはもう届かなかった。

しばらく行くと、開け放たれた表口が見えた。

(やった!これで聞かなくても分かる!)

あとは一直線。

ついに表口に出ると、ヒュウッと風が桜の髪を揺らした。

登城する人々が、驚きと忌まわしい物を見る目で遠巻きにしながらすれ違っていく。

(シュリさん…アスナイさん…どこ……)

長い階段を降りながら、二人の姿を探す。

もう厩舎に行ってしまったんだろうか。

(厩舎ってどこだろう。また聞かなきゃかな……)

そう思いながらも、必死に首をめぐらした。

(お願い、まだいて…あんな別れ方、いやなんです)

祈るような気持ちでいると、周りから頭一つ分抜けた、赤髪が目に飛び込んできた。