デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

人の間を縫って、小走りで進む桜。

時折彼女を見た人間が、恐れや驚きの表情を見せるが、全く目に入らなかった。

ちゃんと、お別れが言いたい。ありがとうって、言いたい。

その一心だった。

「お待ちください…!桜様!宮の中を走るとは、何という不敬ですか!」

カナンの厳しい声が追いかけて来るが、桜は足を止めない。

また、通路にぶつかる。まるで迷路だ。

後ろを振り返った。

「どっちですか!」

「教えられません。私が来るまでそのままお待ちください」

緑色の目を怒らせ、口を引き結んで歩いてくる。

ラチがあかない。そう思った桜は、ちょうど歩いてきた女官を捕まえた。

「きゃあっ!」
恐れに身をすくませ、桜を見る。

「驚かせてすみません。この宮の表に出るのは、どっちですか」

「あ……あ…」

震える指で、左を指差す女官。