デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「つい今しがた、二人が出立の挨拶に来た」

「え!」

顔を上げた。

今!?

桜の表情の変化に、ふっと紫の瞳を細める。

「もう表に出て、厩舎に向かおうとしている頃だと思うが…急げば間に合うかもしれない。見送ってやりたいなら、好きにすればよい」

「いいんですか!?ありがとうございます!」

パッと笑顔がこぼれる。
ここに来てやっと笑った桜に、王も微笑みを浮かべて頷いた。

「カナン、表まで案内を」

「はい」

こちらです、とまた歩き出そうとしたカナンの横を、桜は走り抜けた。
別の通路にぶつかり、くるりと後ろを振り向く。

「表って右ですか、左ですか」

驚いて固まったカナンと、意外だったのか王も唇を微笑みの形にしたまま、目を丸くしている。

「み…右です」

ひらり、とレモンイエローの裾をひるがえして、桜はあっという間に二人の視界から姿を消した。

はっと我に返ったカナンが、あわてて後を追う。

「お待ちください、桜様!」

二人が去った後、王はまた少し笑って、謁見に戻った。