デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その時、二人の後ろから声がかかった。

「おや?誰かと思えば、アスナイとシュリではないか」

勿体つけた、嫌味な声音。
振り向くと、でっぷりと太った男が、蛇のような目で見ている。

(げっ…)
(チッ、面倒な…)

王都の配属で、二人の二年先輩に当たる武官のネスだった。

「…ご無沙汰しています、ネス殿」

心の声を封じて、二人は頭を下げる。

「地方で野盗団相手に鍛錬に励んでるんじゃなかったのか?宮中は泥にまみれた靴で踏みこんでいいところではないぞ」

「はは、これはまた朝から目が覚めますね」

アスナイがニッコリと笑って答えた。

一年前、王の御前試合の『武』と『文』それぞれでシュリとアスナイにめった打ちにされてから、これなのだ。
当時二人は武官になりたてで、先輩の胸を借りるつもりで挑んだのが間違いだったらしい。

父親が軍部の要職についているため、地方赴任に我慢ならなかったネスが、早々に王都付にしてもらったというのは有名な話だ。

「何しに来たんだ?王にゴマをすりにきたのか?その上等なお顔で」

下卑た笑いを浮かべる。

ゴマすりはテメーだろ豚野郎と思いながら、

「いえ、王からの任務が終わりまして赴任地に帰るので、ご挨拶に参りました」

シュリが答えた。