デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

(……あんまり、寝た気がしないな…)

広い客室の、やたらと立派な寝台の上で、むくりと桜は体を起こした。

早朝の日の光が、部屋の大きな窓からさんさんと降りそそいでいる。

『おはよう、桜』

そう言ってくれる人は今はいない。
ひとつため息をついて、ぶんぶんと頭を振った。

(いつまでも考えちゃだめだ)

広い部屋の中に、一人。

(……初めてじゃない。ずっとそうだったじゃない。もとに、戻っただけ…)

家にいた時も、一人だった。

訪ねてくる友達がいるわけでもなく、両親が体を気遣う電話をかけてくるわけでもない。

のろのろと立ち上がって、湯殿の脇にある鏡を見る。ひどい顔をしていた。

「お風呂、入ろ…」

体が温まって、少しはマシになるかもしれない。

夜着を脱ぎ、浴槽に身を沈めた。