デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

一方、桜はカナンと二人、大きな【公宮】をようやく出たところだった。

最初に入ったあの小さなドアがある正面ではなく、裏口だった。そこから渡り廊下が始まり、星と2つの月の光を浴びた美しい庭園の中を通っていく。

ランプを持って桜を先導する金髪の少年は、一言も口を利かない。

桜とそう変わらない年の頃に見えるが、全くの無表情だ。

何とも居心地が悪い沈黙が続く。

しばらく歩くと、左に平屋作りの建物が見えてきた。

平安時代の【寝殿造り】のような、横に広い、派手さを抑えたものだ。

カナンは左に曲がり、真っ直ぐその建物に向かってゆく。

公宮よりはずっと小さいが、この建物もかなりな広さだ。

豪華な装飾はなかったものの、白木をふんだんに使ったそこは、温かみのある内装になっていた。

(日本の家みたい。なんだか落ち着くな…)

「部屋につきました。履物をこちらへ」

カナンが、戸の前で立ち止まり、横にある木のトレイのような物を指した。

「あ…はい」

サンダルを脱ぎ、その上に置く。

戸を引くと、まず帳があった。
それをかき分けると、立派な寝台が奥にあり、手前には小さな椅子とテーブル。ソファのような役割だろうか、とても大きなクッションもおいてある。ふわふわの絨毯まで敷かれていた。

(ひ、広い…)

おまけに、この部屋だけではないらしい。

「湯殿が、こちらです」

カナンが横にある引き戸を引くと、石造りの床に白木でできた広い浴槽がすえられ、湯があふれていた。