今までの宮よりも一段と壮麗なその建物に、桜は圧倒された。

まず、傾斜は緩やかだが階段が長い。

それを上りきると、宮の白い壁には細かなレリーフが施され、美しい彩色が施されている。
かと言って安っぽいけばけばしさは全くなく、全体に見事な調和が保たれていた。

正面の大きな入り口はすでに扉がしっかりと閉じられていたが、その横に小さなドアが開けられてあり、中から明るい光が煌々とさしていた。

三人がそちらへ向かうと、ドアの前に人影が一つ、たたずんでいる。

「シュリ殿と、アスナイ殿ですか」

人影が静かに呼ばわった。

「はい。王命により、例の者を連れて、まかりこしました」

揃って深く礼をする。

「我が君は、すでに謁見の間でお待ちであられます。こちらへ」

小さなドアをくぐると、中は十分に明るく、人影の顔もはっきりと分かった。

肩より少し上の金色の髪に、緑色の瞳をした若い男だった。
アスナイやシュリとは違いパンツスタイルではなく、昔の中国の絵に出てくるような長い着物を着ていて、剣は身に着けていない。

なんとなくネコを思わせるような美貌は、シュリやアスナイよりも年下に見えた。

(……王様の家来って、顔採用なんじゃ………)

本気で桜はそう思う。シュリやアスナイにしても、目の前の少年にしても、こうまで美形が続くとは。

一瞬、ちらりと少年の瞳が桜を見たが、無表情にくるりと背を向けて、先頭に立って歩き出した。