デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「これ……」

「着替えよ。文句あんのっ」

「え…いいんですか?だってさっき、ワンピース一枚だけって」

桜が戸惑うと、カッと目を吊り上げた。

「毎日それを着るつもり?アナタはよくても、アタシのかわいいワンピースちゃんがすぐダメになっちゃうでしょ!!」

じゃあ何で下着まで頂けるんですかとは、聞かないほうがいいだろうと桜は判断した。

「……甘えます。ありがとうございます、シディさん」

悪い人じゃない。そう思って、桜はシディを見た。

「全く…キーキーよく鳴く子豚ねッ。うるさくてかなわないわ。ほらっ、そこの鏡台に座んなさい!」

え?もう終わりじゃ?

キョトンとする桜を、ジロリと睨んでシディは言う。

「アナタ、アタシのワンピースちゃんとサンダルちゃんを着ておいて、そのみっともないボサ髪で王に謁見しようって言うの?お座りっ」

「はいぃ!」

そそくさと鏡台に座ると、シディがブラシで桜の髪をすき始めた。
丹念に何度かブラッシングすると、漆黒の艶がよみがえった。

(フーン……)

少し、目を見張る。見たことのないような、神秘的な美しさ。そう思った。

もっとも、桜はこの髪が数あるコンプレックスの中の一つなので、その価値にはてんで気づいていない。