デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「バカで、醜くて、女なんてね!!統括長として命じるわッ、それを脱いで、アタシに謝りなさい!」

完全に頭に血がのぼっている。

「嫌です!!」

桜は、キトニでの獣との命のやり取りを思い出していた。

あの時、少しだけだけど、自分を持って立ち向かうということができた気がした。

今も、そうすべき時なのかもしれない。

譲れないものは譲れない、私は私なのだと。

「アナタ……何も持たない…異質物のくせに、よくも、アタシの服を着て、そんな事……」

シディはワナワナと震えだしている。

「そうです。私は一人ぼっちの、異世界の人間です。…だからこの世界の、誰の指図も受けないわ!」

「っ!」

シディが言葉に詰まる。

「私がここで従うのは、私の気持ちだけです。あなたじゃない。あなたが私を悪くいうのは勝手です。でも、あなたは私を従えられない。だって、私はあなたの召使じゃない。だから、あなたの言うことなんか、聞きません!!」

―――沈黙。

この広い部屋で、物音一つしない。

はあはあと、息をつく桜の呼吸だけが小さく響いた。

(……ん?)

見回すと、まるで人形のように、皆呆気に取られた表情で自分を見ている。