デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「失礼する。王都武官のアスナイと申すものですが、入ってもよろしいか」

戸の外から、丁寧に呼びかけるアスナイの声に、中から小さく声が聞こえた。

「いいわよ〜!」

了解の返事に、スラリと引き戸を開ける。

(わぁ……!)

桜は目を見張った。

何十畳ほどあるのだろうか。
ものすごく広い部屋に、ところ狭しと机、反物、服の図案などが山のようにひしめき合い、若い娘から年配の女性までが走り回ったり、裁縫をしたり、打ち合わせらしきものをしている。

大きなファッションのブランドのアトリエのようだった。

目を奪われていると、タッタッタッ、と弾むような足音が聞こえてきた。

「あらぁ〜ん、アスナイちゃん、お・ひ・さぁ〜ん!」

「!?」

桜がぎょっとしてそのセリフに似合わない低い声の方を向くと。

胸が深く開いたラメ入りの赤のシャツに、紫のパンツ、色ガラスのチェーンベルトに、頭は真ん中から左右それぞれベビーピンクと明るい緑色という出で立ちの……どこから見ても細身の男性が現れた。

「やぁっだあん、もう!来てくれるなら来てくれるって言ってくれればイイのにィ!」

両手をグーにして、小さな口ひげの生えた口元へ当てながら、ブリブリと腰をくねらせた。