デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

“……さて…お主たちの用件を聞いてやるかの。若獅子が二頭、部屋の外でお主を案じて、この部屋に乱入せん剣幕じゃ”

今度は目を細め、クスクスと笑った。

そしておもむろに片手を上げ、桜へピタリと人差し指を指す。目を閉じ、白いひげの下で何事かを唱えた。

フワリ、と足元から温かな風が、まばゆい光と共に巻き起こった。マントを優しく揺らしながら、桜の顔の前で光が次第に収縮し、驚きで半開きの唇へ入りこんでいく。
一瞬、ポウッと桜の全身が光ったが、すぐに消えた。

「な……何……!?これ………!」

「どうかの、わしの言葉が分かるかな」

「えっ!?」

目を見開いて、神官を見つめた。今度は意識ではない。ちゃんと、声を伴った言葉として理解できる。

「うまくいったようだの。これで、この世界の者と言葉を交わせよう」

「……しんじ、られない……」

科学的にあり得ない。桜は呆然と、軽く頭を振った。

「だが、現実じゃよ。ゆっくりで良い、少しずつ受け入れてゆけば」

そんなマネが、できるだろうか。魔法なんておとぎ話の中の産物で、桜の世界は科学が支配する世の中だったのに。
今立て続けに、自分の常識をひっくり返されたのだ。

(あ…でも……)

これで、アスナイやシュリと直接会話ができるのだ。
感謝が、伝えられる。

まだ桜の胸は驚きでドキドキしていたが、それはとても嬉しかった。