気を失った彼女の頬を、風に揺れる白い花がいたわるようになでた。
「……う……」
伸び放題の眉がしかめられ、カサカサで血色の悪い唇がわずかに開かれた。
そして、うっすらと目が開く。
ぼんやりとした視界からの明るい光に、桜は思わずもう一度目をつぶった。
体が、ものすごく重い。わずかに頭痛もする。
ようやく光に目が慣れて、はっきりと映像をむすべるようになった。
「こ…こ………?」
頭をもたげて、あたりを見回す。
見わたす限り、美しい草花がゆれている。ただ、それは草原ではなく、緩やかな坂になっていた。
ここでようやく、桜は自分の下半身が水の中ということに気付き、あわててはいあがった。
「湖…じゃない、河だ、大きな…」
不思議なのは、そよ風が吹いているのに、水面にはさざ波一つたっていない。
「あ…この坂は、土手ね」
大河ははるかかなたまで続き、それに沿うように緑の大きな傾斜が続いている。
「ここ…どこなんだろう」
