森を抜けたのは、夕日が辺りを染めるころだった。
そしてしばらく馬を進めると。

『着いたぞ、王都だ』

シュリが指した先を見て、桜は息を呑んだ。
小高い山になっているその場所から、都が一望できる。

(何…ここ………広い………!)

桜の眼下に、広大な都市が広がっていた。
あのキトニの街など、比べ物にならない。

やはり高層ビルのような高い建物はなかったが、はるか地の向こうまで、みっしりと建物が立ち並んでいた。

『はー、やっと着いたな』

シュリが首を回して言う。

『夕刻か。なかなか早く着けたな』

アスナイも頷いた。

『さて……連れてきたならすぐ謁見させるように言われてはいるが、まずは桜の服を整えるのと、言葉をどうにかしないとな』

思案顔のシュリに、アスナイは言う。

『いや、大丈夫だろ。王宮には、【神児】から高名な神官が一人、必ず派遣されて常駐しているはずだ。その方にお願いして、桜がこちらの言葉を喋れるようにしていただこう』

『服は?』

『それも王宮の『衣の司』につれていけばいいだろ』

その言葉に、うっ、と表情を強ばらせて冷や汗をかくシュリ。

『……服は街で買ってこうぜ』

そう小さく訴えるが、あっさり却下された。

『時間の無駄だ。『衣の司』以上に上質で、多様な服を扱っている店などない』

なぜかおかしそうな笑いを浮かべたアスナイと、ガックリとうなだれたシュリ、そしてまだ目を丸くした桜を乗せて、二頭の馬は王都へと山を降りていった。