初夏に吹くような、美しい風が緑を揺らしていた。
サラサラと、細い優美な葉が音をたてた。
誰もが、「ああ、気持いい」と言いたくなるような、そんな天気だった。
空から降る優しい光、青い空。揺れる木々。
しかし―
風が吹くたびに、たとえではなく本当に、光の粒がリボンのようにたなびいては消える。
空には、白い月のような天体が2つ。
緑の葉は、よく見れば非常に珍しい形をしていた。
ゆったりと流れる、深い青色の河。
流れるといっても、波や流れは見えず、まるで鏡のように静かで、ときおり跳ねる魚がわずかにその水面をゆらすだけだった。
また、風が吹いて、草花たちをなでていく。
ザザ、と大きなウェーブを作ったが、一か所だけ、乱れるところがあった。
青い河のふち、上半身だけを地面に出して草に埋もれ、腰から下は水に浸かっているずんぐりとした人間。
桜だった。
