デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

全く、俺もお人好しだ。

アスナイは小さくため息をついた。

そして、あの赤頭はほんとにバカだ。こうまで追い詰められんと、自分の気持ちにすら気づかんとは。

桜を手に入れるために何でもするといった内容に嘘はなかったが、それをわざわざシュリに話す必要はなかったはずなのだ。

こんなことになってまで。

王に謁見した時に初めて言えば、シュリは何もできないまま、赴任地へ帰ることになっていただろう。
自分にとっては、そっちの方が有利だったのは間違いない。

――武官練成所での日の事を思い出す。

頭脳明晰、医学の素養もあり、その上容姿端麗。
―だが、口が悪くいけ好かない。何を考えているか分からない奴。

自分で何も言ってもないのに、勝手に自分の人物像が一人歩きし、訳の分からない嫌がらせもあり、しまいには修練に支障をきたすまでになっていた。
人から何と言われても構わないが、これにはさすがにうんざりしていた。

そんな時、アスナイにとっては半ば暴力のような強引さで、同期や先輩、教官の中に引きずり込んでいったのがシュリだった。

―お節介な。単にお前の自己満足だろうが。

そう思った。

だが、他人とかかわることでアスナイに対する嫌がらせは自然とやみ、彼を認める人間も増えたのだった。


(……借りは、返したからな)

そう心でシュリに言う。

そして、桜の耳元でまだ顔を寄せている赤頭に、薪を投げた。

『いつまでくっついてる。離れろ、バカ』