デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

『嫌だ』

はっきりとした声が、シュリの口からとびだした。

『ん?』

アスナイが片眉を上げて、シュリを見る。

『お前に、優しくなんぞしない。請願なんて、冗談じゃねえ』

強い目で、アスナイを見据えた。気づいた自分の気持ちのまま、ライバルに言い放つ。

『俺も、こいつと生きていきたい。お前になんか、渡せるか』

『………』

『桜に、感謝されるだけじゃ足りない。記憶の一部になんか、なりたくない。こいつの全てが欲しいんだ』

『おまえのその願望が、この娘を悩ませる事になるかもしれないんだぞ。いいのか?優しいシュリ』

アスナイが冷たく言った。

『絶対、後悔はさせない。俺が今までしてきたような…自己満足でしかないような、中途半端な優しさは、もう持たない』

言い切って、心配そうな桜を見つめた。

そうだ。お前に限りなく優しくしたいんだ。
喜ぶ顔も見たい。でも、それは無償じゃない。それどころか、ずっと打算的かもしれない。お前を手に入れたいから。お前に、愛されたいから。

そのためなら、俺だって何でもする。

そっと、桜へ近づくシュリ。

キョトンと見上げるその顔に、笑いかける。
そしてその白い片手を取り、甲にチュッ、と小さく口づけた。

「!!???」

声にならない叫びを上げ、驚きのあまり口が半開きだ。

その反応すら、嬉しい。

『俺はな、桜。狩りの獲物は逃したこと、ないんだよ』

低く、小さく耳元でささやく。かかる息が妙に官能的で、
桜の頬がボフッと染まった。

『覚悟するんだな』