デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜を、アスナイが連れてゆく?

それがどういう意味か、さすがにシュリでもわかる。

『なん…でだよ。お前、ずっとこいつの事、イラつくって…単に、仕事だって、荷物だって………』

全く食が進まない。

『今は違う。何よりも大切だ。桜に気持ちが通じるなら、何だってやる』

揺れるブラウンの瞳を、静かな紺色の瞳がピタリと見据えた。

『……汚えぞ。今更、そんなの』

『汚い?人の気持ちの変化に、汚いも綺麗もあるものか。…ああ、お前は変わらなかったな。最初から桜に優しくしてやって、桜はお前に懐いていた』

アスナイはさらに言う。

『だが、所詮お前が桜に抱く優しさは、その他大勢に対するものと変わらん。だから、この間桜とお前がこじれたとき、“飼い犬に手を噛まれたようなものだ”などと言えたんだ』

『違う!』

鋭い否定の声に、桜がびっくりして顔を上げた。

こちらに向いた黒い瞳に火の光が映り、黒曜石のように揺れている。

『違わない。お前は旅が終わるまで、この娘に優しくするだろう。桜はそれに感謝して、笑って礼を言ってくれるだろうな。お前はそれに満足して、また別の人間に優しさを振りまく。それだけだ』