デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

獲物の血抜きが終わり、サクサクと解体を始めたシュリ。

狩りは好きで、まだ故郷にいた頃にも父や弟達とよく行った。もっとも、その後は主に食べる専門で、父が料理の腕をふるったものだ。

母の顔は、ボンヤリとしか覚えていない。

病気のせいか痩せていて、自分と同じ、茶色の瞳に赤い髪だった気がする。

何を話したかもよく覚えていない。
ただベッドの上で病身を起こし、いつもそっと優しく頭をなでながら、

“お母さんのかわいいシュリ”

と愛おしそうに呼んでくれていた。

母と交わした、覚えている数少ない会話がある。

“シュリ、人には優しくしないとね。シュリはきっと強い男の子になるから”

“ほんと?おとうさんみたいに、つよくなれる?”

“ええ、もっと強くなれるわ。でもね、強ければ強いほど、人には本当に優しくしないとだめ”

“どうして?”

“愛し愛されるためよ。そして、幸せになるためよ”

“むずかしい…”

“ふふ…そうよシュリ、優しさっていうのは、恐ろしさや厳しさよりも、ずっとずっと難しいものなのよ。でもね、お母さん信じてるわ。シュリはいつか、本当の優しさを手に入れて、愛する人と幸せになれるって”

それからしばらくたったある日、母は息を引き取った。