苦しい。
たすけて、誰か。
こんなに激しい流れだったかと思うほど、自分の体が流されていくのを感じながら、桜はもがいた。
彼女は泳げなくはない。
しかし、大きめのスウェットワンピが水を吸ってしまい、思うように手足を動かせないばかりか、どんどん体力をうばっていく。
ついに、ガボッ、という音とともに口の中に、肺に、濁った水が流れ込んできた。
水面に顔を出すのもかなわず、必死に手を伸ばしてもわずかに指先が空気に触れるのみだった。
ああ…死ぬのかな…
もがきにもがいた末に、ついに動く力を失くした桜は、朦朧とした意識の中で目を開けた。
すると今の今まで聞こえていた水や泡の音は一切消え、しんとした薄い黄土色の水の流れだけが見える。
もう、いいや…
だんだん小さくなっていく桜の視界の先に、暗い闇があった。
何もかもを飲み込むような、暗い暗い、無。
これが、あの世への入り口なのかなと感じながら、彼女は意識を手放した。
