「お~い、待ってよ~!さ・く・ら・ちゃ~ん!」
からかうように、悪意が追いかけてくる。
もともと体が重くて足が遅いうえに、恐怖で余計にもたつく。
本気を出せば男三人、一気に追いついてしまえるだろうに、ゲラゲラ笑いながら、つかず離れずの距離で桜を心理的にいたぶっていた。
「やだ…もうやだ……」
ゼイゼイと息を切らせながら走る桜の目には涙があふれ、初冬の風に散っていく。
似たような家の並ぶ住宅街を走りながら、まるで終わりのない迷路をさまよっているような恐ろしさと心細さを感じていた。
「くる……し…」
もう、限界。
左わき腹を抑えながらとぼとぼと歩いていると、家の列が途切れ、川が目の前に横たわっていた。
