デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

一方、アスナイは茂みを背にして座り、火の番をしながら、シュリの帰りを待っていた。

背後からかすかに桜のはしゃぐ水音が聞こえ、クスリと笑いをもらした。
それにハッとし、複雑な表情になる。

昨日の、小さな薄紅の花を自分に向け、「サクラ!」と嬉しそうに笑った顔が頭から離れない。

トロくて、鈍い。決して美しくもない。自分が一番嫌うタイプのビクついた性格で、ただイラつくだけ。さっさと王都に届けて、もう関わりたくもなかった。

あの娘は『仕事』だ。そう思っていたのに。

あの一瞬、確かに彼女に見とれた。

――“お前がこの娘にどれほど情が移ろうと構わんが”

昨日の自分の言葉を思い出し、ふっと自嘲する。

嘘だ。そんなもの。あのバカが、永遠に自分の気持ちに気づかなければいいと思っている。

『……バカは俺か。全く……出会って数日だぞ』

ハア、と形のよい唇から、戸惑いと切なさが火をゆらした。