デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

戸を開けるとすぐに、王はその変化に気づいた。

サイドテーブルが倒れ、白いワンピースが落ちて、桜が引きつった顔でこちらを見ている。

スッと目を冷たく細めて、大股で寝台へ近寄った。

「何だ?これは。桜?」

「あの」

「手や足を伸ばさない限り、こうはなるまいな。……何か言い訳はあるのか」

ゆらっとその瞳が昏く沈み、能面のような無表情になる。
背筋を恐怖で震わせながら、小さく首を振った。

「ち…違うんです、逃げようと思ったわけじゃなくて…」

ゆっくりと近づく美しい顔に言い募る。

「あの、ゆ…指輪が……」 

「指輪?」

そっと彼の腕に触れながら、バレないようになるべくゆっくりと言った。

「王様からもらった指輪を眺めてたら……落としちゃって。拾おうと思ったんですけど…」

言いながら、今さっきとっさに床に転がした指輪を指した。

「…………」

しばらくそれを見て、また両腕をつかんだ最愛を見つめる。
少しの間そうしていたが、ふっとその手を放した。

「……そうか。なら、良い」

1つうなずいて、立ち上がる。空気がゆるんだ。

密かに胸をなでおろした桜の手首につながる鎖を外しながら、王は低く静かに言った。

「だが、次からそういう時はすべて私に言え。……もう少しでお前を殺すところだった」

そして、桜を湯殿へと引いていった。