デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

明け方頃、王が起き上がる気配で桜は目を覚ました。

一緒にいる時はずっと肌が触れ合っているようなものだから、その身が離れると気がつくようになった。

そっと頭をもたげた彼女に、夜着を羽織って振り返った時に気づく。

「……まだ寝ていよ。だるいだろう?」

あの湯殿での出来事の後、寝台の中でまた桜が気を失うまで狂おしく貪った人とは思えないほどの静かな声だ。

鎖を軽く引っ張って外れない事を確認し、薄く微笑んだ。

「すぐに終わらせて帰ってくる。いい子に、大人しく待っていよ。私の可愛い寵姫」

言いながら、深くて長い口づけをした。

名残惜しげに二、三度ついばむように唇を喰むと、サラ、と黒髪をなでて部屋を出て行く。

「…………」

一人残され、薄明るくなっていく部屋の空気を感じながら、桜は膝を抱えた。

チャリ、カチャ……と硬い金属の音がする。

深いため息をついた。

王の言うとおり、身体はだるい。
まだ奥の熱がくすぶって、体力を奪っていくようだ。

毎日、何時でも飽くことなく想いを告げられ、愛を注がれ続ける。溺れそうになるくらいに。

(でも……違う。こんなのは)

自分の手首から伸びる、鉄の鎖を見て思った。

(何より、王様……すごく辛そう)

桜を失う恐怖と狂気のままに、こんなことをしているけれど、本当は違うのだ。

昨日、桜はそれを確信していた。

顔を上げ、きゅっと口を結ぶ。

(どうにかして、探してみよう。方法を)

王様は、そんなものないって絶望していたけど。

そんなの分からないよ。探しもしないうちからあきらめるなんて……。出来ない。

そして、もし。

本当に、方法が無いのなら……そのときは、本当に私は王様に殺されるのかもしれない。

そう思った。