デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

自分への悪意の芽生えなどつゆ知らない桜は、ふっと目を開けた。

明け方なのか、少し外が明るくなってきているようだ。

背中と腰には、しなやかな腕がしっかりとまわされている。
まるですがりつくかのように、互いに一糸まとわぬ肌が密着していた。

(………)

そっと、その寝顔を見上げた。

相変わらずきれいで、かすかな寝息が規則正しく聞こえてくる。

(……やっぱり、好きだな……)

眉を寄せ、くっと唇を噛んだ。

ひどい言葉で辱められても、荒っぽく抱かれても、嫌いになんかなれない。

だって、自分にそういう手ひどい扱いをする時のこの人の顔は、本当に悲しそうだから。

(同じように時を過ごしていけたら。私も永遠を生きられたら。この人が、王様でさえなかったら)

起こさないよう、そうっと、鎖の音をたてないようにその頬に手を伸ばす。

優しくなでると、一度深く寝息がたてられて、わずかに微笑みが浮かんだ……ような。

それが、狂気で桜を縛る前の優しい彼の顔のようで、桜は嬉しくなった。