デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

彼女は一人、恋人の部屋のベッドから起き上がった。

隣はすっかり冷えて、かなり前にあのひどい人が部屋を出ていったことを示している。


唇を噛んで、その灰色の大きな目に涙を浮かべた。

少しずつその美しい顔が険しくなり、怒りに小さく震えていた。


………こんな。こんな。


昨日の夜、冷たく自分を突き放し、何の感情もないあの赤銅色の瞳でこちらを見ていたアラエ。

あれから顔を洗って食卓に帰って来たあとも、それは変わらなかった。

『どうする?どちらでもいいぞ』

とすらも、聞かれなかった。
まるで彼女などいないかのように、ソファに座って酒のグラスに口をつける。

『バカにして、別れるわ!あなたみたいなひどい人、最低よ』

頭ではそんな言葉がちゃんとできていたのに、口になんか出せなかった。

しばらく両手でワンピースを握りしめながら小刻みに震えて、ようやく出てきた言葉は、

『………捨てないで、アラエ…。……なんでも、するから………』

自分が美しいことを知っていて、これまで男性にここまですがったことなどない彼女にとっては、屈辱以外の何物でもない言葉だった。

チラ、と目線だけでアラエがこちらを見た。

そしてフン、と薄く嘲笑する。

『必死だな。プライドを捨ててもすがりつくのか。ある意味尊敬する』

『あなたが好きなの。……好きなのよ……!』

顔をおおう彼女に、手を差し出した。