デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

彼女が、その可憐な灰色の目に涙をためて、わななく唇を噛んだ後、言葉を絞り出した。

「………どこの女よ」

全く動じることなく、冷然と濡れた黄緑色の前髪を払うアラエを睨んだ。

「私をどこの、どの女の代わりにしてるのよっ!!」

甲高い声に、耳障りだと言わんばかりにアラエは一度手を振った。

フッ、と一度鋭く息をついて、何の感情もないような眼差しを向ける。

「どの女の代わりだろうと、そんなのはお前に関係のない事だ」

「なっ………」

「安心しろ、私とその女は結ばれることなんかない。私の手など届かない」

「え……」

「だから、別にお前との付き合いを終わらせようなんて思ってないさ」

「ひどい!!馬鹿にしないで!!」

小刻みに震えながら、彼女が立ち上がった。

「馬鹿になんかしてないさ。お前は私にとっていい女であることには違いはない。連れて歩くには見た目はいいし、扱いやすいしな」

「な……なん……」

「お前だってそうだろう?』

もはや呆気に取られる彼女に、冷たく言い放つ。

「お前は『近侍である私』が好きなんだろうが。他人に自慢できる結婚相手、裕福な生活。それを見せつけたいがためだろう?私がお前に望むものと、何がどう違う?言ってみろ」

「………っ」

「そう喚かなくても、結婚してやるさ。私の言うとおりにしたらな。お前が私に『近侍の妻』というステイタスと豊かさを求めるのと同様に、私はお前に『あの娘の代わり』になることを求める、それだけだ」

「ひ……ひどい、ひどいわ!!どうしてそんな」

「ひどい?……なら、お前が私に近づこうとした他の女たちにした仕打ちはどうなんだ?自分を正当化するのもいい加減にしたらどうだ」

顔をこわばらせる彼女に嗤って見せた。

「別にいいぞ、嫌なら今すぐ出てっても。お前の代わりはいくらでもいる。あの娘の代わりは誰一人としていないがな」

もう一度髪を払い、濡れた顔を拭いにさっさと浴室へ向かった。