デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「アラエのために、アラエのためだけにこんなに努力してるのに……まだ足りないの?」

潤んだ愛らしい、濃いめの灰色の瞳を揺らして見つめた。


―――“私は、私のものよ”


凛としたあの射るような黒い瞳との差に、うんざりして顔をそらした。

思わず、その苛立ちが彼の口を滑らせる。

「ああ、足りないな」

「え………」

いつもとは違う返しに、思わず固まった。

「お前、少し日焼けしたんじゃないか?」

「そ、そんな……そんなはず」

「私は白い肌のほうが好きだ」

「!」

「その、やたらと体の線を出したがる服も下品だ」

「えっ……」

「それから、髪。もっと暗い髪色のほうがいい。暗ければ暗いほどいい。染めろ」

「アラエ……」

「買ってやった香水、もっと頻繁につけろ。毎日つけるとか言っておいて、私と会わない日はつけてないだろう。別の甘ったるい匂いが残ってる。バレないとでも思ったのか」

「………」

ぶるっ、と彼女の体が一度震えた。次の瞬間。

パシャッ!という音とともに、グラスの中の飲み物がアラエにぶつけられた。

「………」
「………」

互いに無言。