デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その夜。


「アラエ?どうしたの?ぼーっとして。珍しいわね」

彼女の声に、箸を持ったままの思案顔をはっと上げた。

腕によりをかけて作ったのだろう、温かな料理の数々が、テーブルの上で湯気を立てていた。

「冷めないうちに食べて?アラエのお部屋ったら、なんにもないんだから。体を壊しちゃうわよ?」

うふふ、と笑って、自分も恋人の向かいの椅子につく。

夜は酒は飲むが、食事は付き合いでもない限りあまりしないだけだ。
だがいちいち彼女にそう言うのも面倒くさく、「ああ」と生返事をして箸をつけた。

ふと思いつき、目の前の彼女に聞く。

「なあ、お前、深宮付きの女官と話すことがあるか」

「え?」

意外な質問に、その美しい目をしばたかせる。

「なあに、いきなり」

「いや……気になってな」

「あまり…ううん、ほとんどないわね。深宮付きの女官っていうのは、私達の中では殿方で言うところの、近侍・近衛に匹敵するくらいのポジションの女官だもの」

「……まぁ、そうだよな」

「ふふ、前は薄紅女官がいたけど、もう今は誰もいないものね」

「………」

「どうしたの?何か気になることが?」

その問いに首を振り、目の前の料理をひょいとつまんで口に入れる。

「美味しい?薄くなかったかしら」

「いや」