デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

おまけに鏡もない。すぐ緩んでしまったり、髪の束を取り損ねてしまう。

悪戦苦闘する桜を見て、アスナイはため息をついた。

『髪紐も使えないとは、お前はどこかの姫君だったのか?』

また苛立ちが起こる前に、早々に紐を取り上げる。

「あ……」

『じっとしていろ』

振り向いた桜の頭をグイと前に向け、昨日と同じように手櫛で整え、結いあげた。

『よし』

「す、すみません…ありがとうございます」

赤くなりつつペコペコと頭を下げる桜に、

『…もういい。明日以降も、俺が結う。そのほうが早い』

ふっ、と小さく笑って言った。

(……ん?今、笑……)

桜がチラリと顔をあげると、すでにアスナイは回れ右をしていた。