デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「アラエ様。桜様はどちらにいらっしゃるのでしょうか……。まさか、まだ神宮に?」

何も知らない女官たちは心配そうに胸に手を置く。

「いや……。お前たちが心配するようなことではない」

そう言って、近侍の仕事部屋が並ぶ廊下の方向へ、また歩き出した。

いくつかの角を曲がって、同じようなドアの並んだ、いつもの仕事場につく。

つと顔を上げると、ちょうど端の方の部屋のドアから、遠目にも分かる金髪の文官が出てきた。
上司に見せに行くのか、書類の束を脇に抱えている。

いつもの人形のような瞳を伏せて、こちらに気づいていないかのように歩いてくる。

「………」

少し迷ったが。

「カナン」

アラエは声をかけた。

ふっと、緑の目だけを上げて後輩が自分を見る。

「……はい」

相変わらず、表情の無いやつだ。

小さく息をついた。

「ちょっと聞きたいんだが。お前、最近王のご客人と会ったか」

「え……?」

「いや……最近、王のご客人へのお召がないんだよ」

少し、その緑の瞳が大きくなった。

「お召がない……?」

「ああ」

うなずくと、カナンは目を伏せた。

「ご客人は……正式に、御寵姫になられたと……きいて、いますが」

声が震えないよう、気を使った。