デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

はっ、と天井に息をついて、自分の執務部屋に向かい始める。

あと数時間もすれば、仕事は終わる。

きっと、あの女が部屋に来ているだろう。

妻気取りで。

バカな女だ。手ひどく利用されているとも知らずに。

フンと鼻を鳴らして広い廊下を歩いていると、女官が二人、彼女らの控え部屋の方へ向かうのが見えた。

この広い宮に女官など何百人といるから、普段はそのへんの石ころ同然にしか認識しないのだが。

(……あれは、確か)

客用の宮付になっている女官だったはずだ。

それを思い出したアラエは、少し大股になって彼女らのほうへと歩いていく。

「そこの女官、待て」

呼ばわると、茶色い髪の娘と青い髪の娘が同時に振り向いた。

少し驚いた表情をして、一礼する。

「これは、アラエ様」

「ああ、顔を上げろ。……お前たちはたしか、王のご客人のお世話をする女官だったな」

アラエの問いにまたわずかに表情を動かした後、その顔を曇らせてうなずいた。

「ええ……左様でございます」

やはり。

「王の客人は、おつつがなくお過ごしか?……ここ数日、我が君のお召がないのでな。気になっていた」

なるべくサラッと聞いたのだが、二人はますます眉根を寄せて首を振った。