デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

……しばらく、沈黙がおりた。

外から聞こえる虫の音と、桜のすすり泣く声がするばかりだ。

「………ならば、どうするというのだ」

ポツンと低く虚ろな声が、後ろ向きの彼から聞こえる。

「私のもとを去って……どうする?」

ゆっくりと、振り向く。

その紫の瞳が、まるで地獄の蜘蛛の糸にすがるように揺れていた。

「エヴァさんは……他に愛する人を見つけなさいって言ってたけど……」

その言葉に、ギリギリと歯を食いしばる。

あの、若造。
神児でなければ、桜が止めていなければ、八つ裂きにしてやりたい。

「私はどうしても、王様以外の人は嫌なんです……」

「………っならば、そのような事を言うな。私のそばにいろ。余計な事など考えるな」

その言葉に、悲しく首を振る。

「大好きです、王様。私一生、あなたが好き。だからこそ、一緒にはいられません。幸せであればあるほど、悲しくなるんです。時間が経つに連れて、きっとそれは大きくなっていく………逃げられない事実だから」

その言葉に、王の呼吸が次第に浅くなっていく。紫の瞳は瞳孔が開いて。

「……ならば逃げよ。逃げてみろ。すぐに必ずお前を捕まえる。この世界の、どこにいたって」



「……だから………もう、この世界にはいられません………」


「!!」