デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

何も言えなくなった桜に、エヴァは真剣な声で言う。

「……王は、不死だからですよ、桜さん」

「え…」

「あの、美しく若い姿のまま、永遠を生きる。だから、やめなさいと言っているんです」

「…………」


「あなたと彼は、同じ時を生きては行けない」


ハッと息を呑む桜のその表情を、哀れさに目元を少し歪めて見つめた。

「あなたはやがて年を取り、その可愛らしい顔にも老いが刻まれていくでしょう。それはそれで尊いことです。でも、王は変わらない。何一つ」

「……………」

「王の寵愛が、まだその時あなたにあると、自信を持って言えますか?もしそうでも……老いた自分に、美しいままの彼から、誰にはばかることなく愛を捧げ続けられる事に、あなたは耐えられますか?」

体が震え始めた。

「そして他の夫婦のように、最後は一緒に神の御許で休まることもない。あなたは彼の永い時の一瞬になるだけです」

「あ……」

「『時間』というものが、どれほどのものを奪って行くのか、王を見つめるあなたなら分かりますね?自分自身すら失っていくあの人が、あなたの事を、どれだけ覚えていると思いますか」

「もうやめて、エヴァさん……」

指先まで震える桜は、目をつぶって首を振った。