デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その頃、仕事を早々に終わらせてしまった王は、ブリザードのような冷たい空気をまといながら控えの間を出た。

イライラも不機嫌もとっくに通り越した無表情で、その紫の瞳は暗く静かに沈んでいた。

(……なぜ神児のために、私がこんなに我慢せねばならぬのだ)

やっと桜と心が通じて、あの白い身を蕩かすほど毎日愛そうとしていた矢先に、三泊も離れ離れとは。

鋭くため息をついて、また不安に眉を寄せた。

神児が、要らぬことを吹き込まなければ良いが。

例えば……桜の世界への帰り方。

想像するだけで、恐ろしさに背中がわずかに粟立った。

神力を使えず、かつ神児とは対等な立場である自分は、そうなったときにはなすすべがない。

(桜。待てない……。早く帰って来い)

切なく目を細めたとき、客用の宮の横にさしかかった。

『客用の宮』とは言っても、桜以外に使っている人間はいない。

「…………」

立ち止まり少し迷ったが、吸い込まれるように足をその入り口に向けた。