デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

『出来れば、明日も見ていたいと思う。――が、お前は桜のことは一つも意識していないんだろ。つまり好きでも嫌いでもない』

『いや………それはだな』

『しかし、お前はあのイノシシの丸焼きは『好き』なわけだ。じゃあ好きでも嫌いでもないあの娘より、好きなイノシシの肉を乗せたほうが、お前も嬉しいだろう?』

――愛馬と自分の荷物を肉汁まみれにしてなるものか。

アスナイはシュリを攻略した。

勝利の笑みを浮かべて、切り分けた肉を二人に配る。

「……いただきます」

おっかなびっくりで、大きな肉にかじりつく桜。

「熱…、ん…わぁ、美味しい…!」

初体験の野性的な旨味に、思わず顔がほころぶ。

静かに感動しながらもくもくと食事をする彼女を見て、シュリはアスナイをジロっと睨んだ。

『お前あんな嘘ついて、あいつをダシにしてまで肉積みたくなかったのかよ』
『あん?嘘?』

アスナイが怪訝そうに片眉をあげた。

『あいつの髪がどーのこーの言ってたろ』

『……俺は嘘など一言も言ってないぞ』

『え…』

再び固まるシュリ。そんな彼をチラリと一瞥し、アスナイは茶をいれるための湯を沸かしに立ち上がった。