デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

そっと藍色の髪をなでる。

「私が好きなのは、王様ですよ。ずーっと。エヴァさんとのことを、心配してるの?」

さっきまでの苛立ちと怒りがおさまった、いつもの彼女の声が、その耳に優しい。

「いや……分からん。焦がれて、欲しくてたまらなかったお前が、私を愛してくれて、愛されてくれて……幸せすぎて。だから、怖い」

「え?」

「もし、これが壊れるようなことになったらと。正気ではいられない……きっと」

「神宮に行って、エヴァさんの分化が終わったら必ず王宮に帰ってきますよ。何でそれが、今の状態を壊しちゃうなんて思うんです」

「………分からん。この嫌な予感めいたものが何なのか、分からんから、お前に外に出てほしくなかった。余計な人間に会わせたくないし、なるべく深宮にいてほしかったのだ」

また小さくなる王らしからぬ彼の声に、桜はその身をきゅっと抱きしめた。

「私、どこにも行きませんから。ずっとあなたと一緒にいますから。ね?」

自分の胸を小さく炙る、あの嫌な不安がまた大きくなる前に、桜はその腕に力を込めた。