デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

控えの間の前には、近衛と何人かの近侍が並んで控えていた。

いきなり現れた黒髪の桜に、皆一様に驚いた顔をした後で膝を折る。

近侍の列の中から、アラエが驚いた表情でやってきた。

「桜様!」

「王様はこの中ですね?呼んできてくださいアラエさん。それか私が行きます」

キッとその黒い瞳で見据えられ、アラエは彼女に嘘がばれたことを悟った。

「今しばらくお待ちを」

「いいえ、間に合わなくなっちゃう」

そう言うと、もういいと言わんばかりに戸惑う近衛を押しのけて、控えの間の戸を強く叩いた。

「王様!いるんでしょ!開けてください!!」

その不敵な行動に、アラエを始めとする臣下たちは顔を蒼くして飛び上がった。

「エヴァさんの分化が始まったんですね!?そうでしょう!何で嘘までついて私に黙ってたんですかっ!」

儚く消えた蝶からの、かすれるような声を思い出して叫ぶ。

まるで無視を決め込んでいるかのように、戸は開かれない。

ついに桜は一度大きく戸を叩くと、キッパリと言った。

「私、神宮に行ってきますから。エヴァさんの馬車が私を迎えに来てるんですよね?失礼します」

口を引き結んで、回れ右をしようとした。