デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

公宮の中は、ザワザワといつにもまして忙しそうだった。

地位の高そうな武官たちが足早にあちこち移動している。

神児の分化の間は、エヴァの神力が使えないから、人の手による備えが全てだと王は言っていた。

それを裏付けるかのようなその慌ただしさに、桜は唇を噛んで歩き始める。

あたりを見回し、一人の文官を捕まえた。

「すみません」

「何だ、この忙しい時に………って、うわぁっ!!」

桜の黒髪を見て、飛び上がった。

引きつった青い顔でその瞳を見つめた後、ハッとしてあわてて腰を折る。

「こ……これは、桜様」

「頭なんか下げなくていいです、それより王様はどこですか。謁見は、もう終わりましたか」

「はっ……今しがた、神宮からの使いが……謁見の間を退出いたしましたが……」

今しがた。急げば間に合うかも。

「王様はどこですか」

「わ、我が君はおそらくは、控えの間にてお召を解いていらっしゃるかと」

「連れてってください」

間髪入れずに言う桜に、困惑の表情を上げた。

「し…、しかし……」

「早く!大事なことなんです!」

主君の寵姫の大きな声に、ヒラの文官が逆らえるわけがない。あわてて桜の前に立って歩き始めた。