デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

アラエが退出した後、特にすることもない桜は、外に面した障子を開けた。

さすがに蒸し暑い。

(あれ、雨降ってる?)

ふと気づいて、桜は空を見上げた。霧雨のような細かい水滴が、淡い日の光を浴びて漂っている。

(いつから……?全然気付かなかった……天気もわからないような生活してるのか)

また、このままでいいのかという思いが胸にわき起こった。

と、かすかな音がする。

その何かが障子を叩くような音の方を見ると、一匹の銀色の大きな蝶が、パタパタと弱々しく羽ばたきながら桜の部屋へ入ろうとしていた。

「わ。おっきなちょうちょ。何だろう」

長いことそこで羽ばたいていたのか、その羽は湿っているようだ。

また少し障子を開けてやると、次第にその高さを下げながら、驚く桜の方へ飛んでくる。

フワッと小さな小さな羽ばたきの気配とともに、ワンピースの肩に止まった。

『桜……さん…………』

微かな声がした。

「えっ!?」

驚いて蝶を見る。

『王……は、やはり、許しては……くれませんか………?』

「エ……エヴァさん!?」

苦しげな途切れ途切れの声に、身が震えた。

『謁見が……終わるまで……馬車……を……待たせて、あります………から………』

「えっ?馬車?何のこと?」

『ああ……分化の間に………入る前、に………あなたとお話した、この体のうちに……ひと目だけ、あなたに会いたかったの……ですが…………』