デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

食事が丁度終わった頃、戸が叩かれた。

「はい」

「失礼いたします」

戸が開かれ、アラエがいつもと変わらぬ微笑みを浮かべて姿を見せた。

「桜様、我が君より、少し部屋に呼ぶのが遅れるとの仰せでございます」

「あ……そうなんですか。大変な事でも?昨日も何かあったようだし……」

するとその赤銅色の瞳を伏せて、首を振った。

「いえ、本日は謁見人が多いがゆえです」

「そうですか……」

何だか何かが腑に落ちなくて顎に手をやる桜を、アラエはそっと見つめた。

白い肌。黒い髪。

あの香りに包まれながら、頭の中で何度もこれを。

(……情けない)

よりによってこんな……こんな女を。

香水まで買って、あの女を身代わりにしてまで。

だが昨夜は、意識が白むような悦楽を味わった。

いつもどんな時でも、どこかに冷静な自分がいたのに、あんな事は生まれて初めてだった。

これが、本物の彼女だったなら。

くっと唇を噛んで、また盗むように桜を見る。

(愚かだ……。この娘は、とっくに主君のものなのに)