デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

彼女が宮中で、自分に近づくために取った手段は、彼女自身を磨く事だけではなかったことを、アラエはとっくに知っていた。

自分に近づこうとする他の女官を、自分に気のある他の男数人で手ひどい目にあわせたり、女官長に嘘の証拠をでっち上げて辞めさせたり。

だが、宮中というのはそういう所だ。

それをよく知っている彼は、全てわかった上で彼女をそばに置いていたのだ。

「行くぞ」

先に立って歩き出す。



アラエの部屋も王宮のすぐそばにあるため、程なくして到着した。

きちんと片付けられた、モノトーンの家具が置かれた部屋。

彼女が目を輝かせてため息をついた。

「ここが……アラエのお部屋なのね」

やっとまた一歩、彼のなかに入れた気がする。

あとは他の女を近づけさせず、結婚まで持っていければ。

「ほら。つけてみればいい」

その想像を中断させ、アラエがさっきのトワレを彼女に渡した。

嬉しそうにうなずき、首筋と手首にそれをつける。

爽やかで清らかで、優しい花の香りが立ち上った。

正直、好みの香りではない。だが。

「……いい香りだ」

彼が優しく微笑むから、そんなことはどうでも良かった。